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監獄兎中心期間限定サイトの日記という名の掃溜
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 キル様の話使う以上、いい加減本家で私的シーズン4の最初話やらないといけないと思いつつ進んでません。
 キル様しゃべるから使いやすいんだ…あと完璧捏造自由だからさ……


 双子×緑。

 酒の席。皆で仲良く飲みましょう。



 本文は『続き』からどうぞ。
 

 豹変は、唐突だった。

 「ふっひゃひゃひゃひゃ~っ!きるねんこさんきるねんこさんたのしくのんでますかぁ~?」

 真っ赤な顔に満面の笑みでプーチンが叫び、ばしばしと何十年来の旧友にするように傍らの背を叩く。
 ばしばし、べしべし、と遠慮会釈なく、叩く。


 裏世界でも指折りの実力を持つ首領の背を、叩く叩く。


 殴るような勢いで叩かれながら、キルネンコは唖然とした顔でプーチンを見ていた。怒る事も跳ね除ける事もせず、滅多なことでは動じない赤の瞳が点になっている。
 言葉悪く評すれば呆けていた顔が、正面を向いた。

 「なんだ、コレは」

 指差しで尋ねるキルネンコに、向かいで延々手酌で飲み続けている双子の片割れは聞こえないふりをしてグラスに口をつけている。
 ちなみに飲んでいるのはエストニア。アルコール度数98度。
 諺に『お茶は酒ではないからそんなに飲めない』とあるが、この酒に関しては『お茶ではないからそんなに飲めない』が適切だ。
 消毒液にも使えるそれを飲んでも色一つ変わらない顔に忌々しそうな声がかかった。
 
 「知ってたなら先に言え」
 「『言え』とは言われなかった」
 「揚げ足とってんじゃねぇ」
 「飲ませたのはお前だ」

 もちろん、分かってて止めなかったのだが。
 取り合おうとしない相手にキルネンコが舌打ちする。
 キルネンコも恐らくプーチンが下戸だとは見当はついていた。ただ、その度合いと酔った後の反応は想像とかけ離れ過ぎていた。

 「誰がバルチカの2番で酔うと思う?」

 サワーチェリーとレモンジュースとを混ぜたビール―――言ってしまえばビールの名を冠したジュース―――で、酔う奴がいるなどと。
 片手に持っているウォッカとは訳が違う。度数96度のスピリタスならそれこそ頭のネジが4、5本吹っ飛んだ酔い方が出来るだろうが。
 それぞれの度数だけ見るとキレネンコの方が酒に強いように取れるが、ここまで純度が上がってしまえば差はない。足元に転がる空瓶の本数を見ればこの兄弟に優劣はなかった。
 二人の問答の間もばしばしと肩やら背中やらを叩いてくる、コップ一杯のビールで盛大に酔ったプーチンをキルネンコは再度見た。

 別に、酔っ払うのは構わない。むしろそのつもりで飲ませたのだから。
 見た目からして酒に弱そうであったし、普段爛漫な性格の相手ほど酒が入れば性的に緩くなるのが相場だ。
 保護者気取りの男が何のリアクションも起こさなかったのは引っかかったが、大して気に留めずにいた。
 ―――それが間違いだった。
 きゃっきゃっと上機嫌な様子で隣に寄ってくるのが、悪いわけではない。悪いわけではない、が。


 萎える。


 まさに、その一言だった。





 普段の人を食ったような顔が顰め面になるのを正面に捉え、キレネンコはグラスに当てた口に冷笑を刻んだ。
 大方予想と外れすぎて逆に気分を醒めさせられたのだろう。何時ぞや自分が経験した時と同様に。あまり認めたくないが所詮根っこの部分の同じ双子、思考回路にそう差はない。
 隣に座って絡んでいるのは気に入らないが、向こうに精神的ダメージが与えられているのだから上々だ。

 勝利の祝杯は、気分が良い。

 してやったりな感情を表に出さずに煽った液体が喉を焼いて通り落ちた。


 一人の気分を凹ませもう一人の気分を若干良くしながら、誰よりも絶好調に好調なプーチンはその間もキルネンコの背を叩き、編んだ髪を引っ張り、ウォッカのグラスを奪い(これは直後にキレネンコに奪われてその胃に消えていった)好きなように振舞う。絡む相手が相手なだけに、殺されていても文句は言えまい。
 上機嫌に編んだ赤髪を弄んでいたプーチンの手が、ふと止まった。
 脱力気味で跳ね除ける気も起きないキルネンコの顔をじーーーっと見つめる。
 と。

 ぼふりっ。

 「お。」
 「…………」

 バキンッ―――!と空気どころか物理的に何かが砕ける音が響いた事を気にする者は部屋に居なかった。

 「むっほほぉー!きるねんこさんふかふかですねーっ!ふっかふか~!」

 飛びついたプーチンがふかふかとキルネンコの肩口に顔を埋めてくる。
 正確には彼の服についたファーの部分に頬を寄せている。仕立ての良い毛は確かにふかふかで肌触りも良い。動物の和毛なんて比べ物にならない程の柔らかさがある。
 色気もへったくれもない行動だが、首元に当たる酒気を帯びた肌はそう悪い物ではない。
 少なくとも先程までよりはおいしい状態に流れている。
 ファーの感触がすっかり気に入った様子で擦りつくプーチンの身体へ手を回し、キルネンコは何時もの笑いを口の端に浮かべて正面を見た。

 幽鬼のような形相をしている赤い瞳と目が合う。

 ぐっと握っていた手が、開かれる。中からキラキラと光を反射して砕けたグラスの破片が落ちた。
 その手が光速で向かいに伸びる。殴る勢いで伸びた腕は余裕笑いをする横面に埋められず、代わりにひょこっと生えている薄金のちょんまげを引っつかんだ。
 ぐきっと音を立てて首が反り返る。逆さを向いた状態でとろんとした緑の瞳が据わった目をしているキレネンコに焦点を結んだ。

 「あーきれねんこさんなんかさかさまですねーさゆうひたいしょうですねぇー」

 完全に酔った意識ではっきり名前を認識しているプーチンに益々キレネンコの目つきが悪くなる。
 相手間違いでもしていればまだマシなものを。
 自分と間違って容姿の似た相手に抱きついていたのなら言い訳が立つ。聞く気はあまりないが。
 けたけた逆さ向きで笑う姿に、後でとことん教え込んでやらなければなるまい。
 その前に。

 「……さっさと離れろ」
 「くっついてきてるのはコイツだが?」
 「酔って分かってねぇだけだ」
 「普段満足させられてないの間違いだろ」
 「………………」

 「あっれーー?きれねんこさんときるねんこさんがなんだかたくさんいますよぉ~これはすてきですねぇー」 

 冷え冷えとした赤い瞳と、不敵な赤い瞳と、上機嫌な赤い顔と。
 宴の夜は、未だ長い。

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