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監獄兎中心期間限定サイトの日記という名の掃溜
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 ヴィレッジヴァンガードでキレとプーが並んで囚人番号掲げているステッカーの説明に「プーのほうがキレよりちょっと高い」と衝撃の指摘。いや、デスクトップその絵なんでうっすら分かっちゃいたんですけどね…うぅん。
 自分とこの擬人化ではプーはショタ属性なんで…反対にキレは背高いから15センチ~20センチくらい差を設けたいところ。うぅん。


 なのでこじつけ理論の赤+緑。



 本文は『続き』からどうぞ。


 構えたポラロイドのファインダーを覗き込み、カンシュコフは唸った。

 「うーん……どうも上手くいかねぇな」

 ポラを縦にしたり横にしたり、後ろに下がって遠近感を図ったりしてみるが、どれもいまいちだ。

 「カンシュコフさーん、まだですかー?」
 「うるせぇ541番!少しの間くらい踊らずにじっとしてろ!」

 催促してくる新人囚人―――プーチンの声に、カンシュコフは怒鳴り返す。落ち着きのない新人は待ち時間が退屈なのかコサックなんぞを踊りだしてる。刑務所で踊りを踊るようなその神経が理解できないが、レンズ越しのその表情は非常に明るく楽しげだ。

 「第一お前がちっこいから面倒なんだぞ、このチビ」
 「ほふっ!ぼ、ぼくちっちゃくなんかないですよぉ!」
 「明らかにチビだろ。どチビ」
 「ふえぇー、ちびじゃないです~」

 ぷるぷる首を振って全否定するプーチンだが、明らかに成人男性の平均身長には足りていない。緑と白の囚人服も一番小さいサイズだというのにブカブカだ。
 特に隣に並ぶのが平均身長を軽く越している長身の囚人のため、対比効果で背の低さが一層際立つ。
 04番の番号ボードを持ったキレネンコは、プーチンとカンシュコフのやり取りに全く興味を示さずかったるそうに立っていた。

 囚人の照合写真を更新するべく各雑居房ごとにまとめて撮影しているのだが、この二人の撮り難いことといったら他所の比でない。
 まず写真を撮るため並べと命令した時点でキレネンコがボイコットを示し、制裁をしようとしたところで容赦の無い拳を浴び、満身創痍になったあたりでこっそりポラを触っていたプーチンが床に落として破損させてしまった。
 やっとの思いで囚人二人を並べたと思ったら、今度は被写体が最悪のバランスをしている。
 二人揃ってファインダーに収めようと下がると囚人番号が小さくなりすぎるし、アップにするとどちらかがフレームアウトする。文字通り凸凹コンビのていだ。
 ポラを構えて悪戦苦闘するカンシュコフに、プーチンは「良い事思いつきました!」と挙手した。

 「こうやって、」

 ぴょんっ。

 「一番高くなったとこで、ピース!」

 軽やかにジャンプをしてVサインを決める。ファインダーいっぱいに広がる、花丸笑顔。
 ―――しまった、シャッター押せばよかった。
 ベストショットをみすみす逃してしまってカンシュコフは思わず臍を噛んだ。

 「どうですか?これならキレネンコさんと一緒位の高さでしょ?」
 「おぉ、なるほどなー―――で、お前は04番と並んだ位置で停止出来るのか?」
 「ほへ?えーっと……はい、頑張ってみます!ほっ!ほっ!」

 ぴょんぴょんと跳ねるプーチンに、「馬鹿と天然は紙一重だよなぁ……」とカンシュコフは遠い目をした。





 空中停止を成功させる事が出来ないままプーチンが酸欠でへたばってしまったため、仕方なく踏み台で調整をとる事になった。背後の身長表示線は左右数値を変えて両方の囚人に対応させる。
 ちなみにその最終手段を許可するならキレネンコをしゃがませるでも構わなかったのだが、非協力的を地で行く彼がそれを聞くことはなかった。
 踏み台によじ登ると若干プーチンの方が頭位置が高い。普段と違う視界が珍しく、プーチンは思わずきょろきょろ辺りを見回した。

 「541番、ちゃんと前向け」
 「あ、はーい!」
 「それから04番、テメェもしゃきっと立ちやがれ!あとボードは両手で持て!」
 「…………」
 「無視んな極悪犯!!!」

 それから表示線の細工をしたりカンシュコフがキレネンコから延髄蹴りを喰らって伸びたりで、たった一枚の写真をとるのに半端ない時間が費やされた。

 ―――一体何時までかかるんだ。
 至極面倒くさそうに番号ボードを胸の前に上げたキレネンコは、ふと横顔に感じる視線に顔を向けた。
 見遣った先には同じようにボードを掲げたプーチンがニコニコと笑みを向けていた。普段低い位置にある顔が上げ底によって真横に並んでいる。
 無言のまま視線で「何だ」と問う。睨んでいるようにも見える赤眼に、しかしプーチンは脅えるでなく朗らかに笑った。

 「キレネンコさんと同じ高さなのって、何だか新鮮です」
 「…………」
 「天井まで近いし、遠くが良く見えるし。これがキレネンコさんの見てる世界なんですね」

 ぼく今、キレネンコさんと一緒の世界が見えてるんですね―――何時もより近くで聞こえる声はどこか嬉しそうな響きをしている。
 同じ目線にある柔和な緑の瞳に、否定も肯定もないまま無感情な赤眼が見た。

 「おーい、撮るぞー」
 「あ、はい!キレネンコさんも笑って笑って!」
 「541番、ピースはやめろ。ピースは」

 向けられたポラロイドへ突き出されたVサインの横で、キレネンコはぞんざいに下げていた『04番』のボードを持ち直す。面倒くさいが両手で持ったそれを正面へ向けた。


 同じ世界は、見えていない。
 同じ目線にある瞳には、憂いも苦悩もない笑い顔は映らない。
 向けられる柔らかな緑の瞳を見る事が出来るのは、自分だけだ。

 ……とりあえず写真が出来たら看守を殴って全て差し出させる必要があるな。


 カシャリと音を立ててシャッターが切られる。
 刑務所の一角で満面の笑みを浮かべた模範囚とじと目の死刑囚が、フィルムへと焼きついた。

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