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監獄兎中心期間限定サイトの日記という名の掃溜
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 サーチ様の凄さを知ると同時に我が身を恥じそうな、どうも太宰です。


 双子弟+緑(+赤)
 昨日の髪ネタ弟ver.


 我が家のキル様みつあみの設定なもので……
 というか原作にまともに登場していないキャラをメインに持ってくるのって許されるのでしょうか…?



 本文は『続き』からどうぞ。


 「キルネンコさんは、自分で髪編むんですね」

 慣れた手つきで長い髪が編み込まれていくのを、プーチンは感心するように見た。
 キルネンコの事を不器用だと思っていたわけでは断じてない。ただ彼の住まう部下から使用人までずらりと人の居る大きな屋敷を思い出すと、自然そういった手間な事は他人に任せているのだと思っていた。
単にそれは貧乏人の想像に過ぎなかったようだ。

 「いちいち人にやらせてたら面倒だ」

 告げられた言葉に、成る程お金持ちでも甘えたお坊ちゃんじゃなくて大勢の上に立つ頭目だものな、と改めて納得する。
 自分で何もかも優秀に出来るからこそ、彼は大勢を従えることが出来るのだ。
 出会ってからの日は深いとはいえないが、彼の持つ一種カリスマ的な魅力はプーチンも十分知っている。
 現に淀みなく動く長い指は優雅な印象すら受け、目が離せなくなっていた。
 その手が編む髪は、ここ数年ずっと一緒に居る相手と同じ鮮やかな緋色をしている。

 「キレネンコさんは、昔から髪下ろしたままなんですよね?」
 「アイツは不精だから括らん」

 「流しっぱなしの方が俺は鬱陶しい」という言葉が、瓜二つな容姿である双子の微妙な性格の違いを示している。
 流れる赤髪を厭うという彼の手によって、赤髪はいつもの髪型へと整えられていく。
 緑の瞳を離すことなくその様子を注視していたプーチンは、心中にずっと思うことが一つあった。

 言いたい―――でも言ったら怒られるかも。

 相手の反応パターンを色々想像して悩みながら、その実気持ちがうずうずして止まない。
 苛められるのを待ってるコマネチって、こんな気分なのかな―――そわそわと落ち着かない自分を奇特なヒヨコと重ねて、漸く決心がついた。
 当たって砕けろ、と自分を鼓舞したプーチンが叫んだ。

 「あの、あのっ!僕に編ませてもらえませんか?」

 しゅたっと挙手をしての申し出に、髪を編むキレネンコの手が止まった。向けた視線の先では緑の大きな瞳が期待と不安を半々にして真っ直ぐに見つめている。
 すでにやる気満載なその顔は、仮に拒否の言葉を告げれば雨の日の捨て犬とタイマンを張るくらいに項垂れそうだった。
 思案するようにプーチンを眺めていたキレネンコは、可とも不可とも答えない。
 その代わり、くるっと一巻き、長い指を髪に巻きつかせた。

 たったそれだけで編みかけの髪がするりと解けてしまう。

 絡まることなく魔法のような自然さで広い背中に広がった緋色の髪へと、歓声と共に手が絡んだ。

 

 現在の住まいである部屋へ戻ったキレネンコは、またしても居座っている双子の片割れの姿に酷く嫌そうな顔をした。
 誰にも告げず住居を転々とする生活を送っているというのに、この片割れは毎回居所を探り当てて上がりこんでくる。その手にかかればこの国で人二人の住居を調べる事など造作もないのは確かだ。表も裏も問わず持っている膨大な情報網を使えば昨日の夕飯が何であったかですら調べられるのが、かつての経験で知っている。

 それは分かる。だが、だからといって来るな。

 何度険を持って告げても、人を食ったような態度の相手には全く効果がなかった。

 「あ、お帰りなさいキレネンコさん!靴ありました?」

 一際明るいプーチンの声に軽く頷く。と、その手が自分と同じ色をした髪を手にしているのを見て、キレネンコは僅かに瞠目した。
 視線をずらせばその髪の先にいる相手は「おかえり」も「お邪魔しています」の一言も口にしないで振舞われた紅茶なんぞ飲んでいる。そのカップも、ここ最近住居を移る度に同居人が三脚揃えるようになってしまったのが、実に頭の痛い問題だった。
 すでに招かれざる客は来るのが当然の客になっていた。
 その迷惑な輩を部屋に上げ―――しかも自分が留守の間に―――わざわざ持成しているプーチンに教育的指導の一つでも入れたいが、今日はそれより何より。

 「……お前が髪を触らせるなんてな」

 ぼそりと呟かれた言葉に意外そうな響きを感じて、プーチンは手を止めた。

 「え?キルネンコさんが髪触らせてくれるのって、珍しいんですか?」

 きょと、と見上げた緑の瞳に、平坦な声が返ってきた。

 「触った奴は速攻殺される」
 「―――ぇええええっ!?」
 「おい、途中で離すな」

 『殺す』の単語に、ぱっと編みかけの髪から手を離したプーチンをキルネンコが睨む。慌てて髪を掴むが、動揺が振動となって手に伝わって上手く編むことが出来ない。
 だんだん歪になってきた髪型に顔を顰めながら、キルネンコは元凶である相手を見た。

 「余計な事言ってんじゃねぇ」
 「嘘は言ってない」

 心臓を射抜きそうな瞳を意に介す事無くキレネンコは嘯く。真実、嘘は欠片も混じっていない。
 昔からその赤髪に触れる事は逆鱗に触れる事と同意だった。相手が部下だろうと情事を交わした女だろうと、例外はない。キレネンコも人に触れられる事を厭うが、ことこの部位に関してはキルネンコの方が神経質だった。拘りの差、とでもいうのだろうか。神経の通っていない体の部分だからこそ、余計他人の手が触れるのが気になるらしい。
 そこに、「えと……出来ました」と消え入るような声で告げられ、キルネンコは己の髪を手に取った。

 「………………」
 「その……すみません」

 出来栄えは、大変宜しくない。
 鏡をのぞいて確認するまでもなかった。子供が編んだほうが未だマシではないかと思えるほどにボサボサになっている。花丸とは程遠い、及第点以下。
 自分でもやらかしてしまったと分かっているのか、半眼の赤眼の前でプーチンはただただ頭を下げた。むしろ、下げた顔を上げるのが怖くて出来ずにいた。
 普段の酷薄な笑みを消し、冷気すら感じさせそうな冷ややかな無表情を横顔に浮かべたキルネンコが、無言で髪に指を突き刺す。ぶすり、と刺さった指に止める間もなく解かれた髪が、再度プーチンへと向けられた。

 「やり直せ」

 強い口調で示唆され、プーチンが心臓と一緒に跳ね上がる。大きく開かれた瞳が恐怖より純粋な驚きを示して目の前の相手を見た。

 「ほっ!?、え、でっでも……良いんですか?」

 僕、まだ死にたくないんですけど―――暗に匂わせて伺った途端、じろりとねめつけられる。それだけですでに殺された気になってしまう。
 ガタガタと半泣きで震えるプーチンに、「早くしろ」と叱咤が飛ぶ。慌てて髪を手に取ったが、息の根を止められることはない。
 改めて触れた赤髪は癖が少ない。細く指通りの良い赤毛は、触り慣れた相手の物よりも若干柔らかく感じる。ここも違うな、と新鮮さを持って感じたプーチンは、ふと脇に立って睨むような視線を送るキレネンコを見た。
 その背に硬めの赤髪が流した姿は、編まれるのを待っているキルネンコと向かい合うとまるで鏡写しのようだ。正確には解いている状態はキレネンコを示すわけなので、という事は逆になるのか。
 赤髪の二人を交互に見たプーチンは合点いったように「そっかぁ」と、のんびりと笑った。

 「下ろしているとキレネンコさんとお揃いなんですよね」

 細部は違っても、似通った容姿にはっきりとした区別のある部分はない。顔に走る大きな縫合痕すら同じだ。
 似ているのが悪いわけではないはずだ。自分と血の繋がる家族と、似ているというのは。
 良いですねぇ兄弟って、と続けようとしたその口は、しかしぐわしっと頭を掴む手に言葉を紡げなかった。
 ギリギリギリと、骨に響くような音が鼓膜ではなく、脳にダイレクトに聞こえてくる。なんだかとっても痛いが、目の前で眼光鋭く睨みつける夜叉のような相手には訴えられない。
 弁当箱のように頭部がぱこっと取り外されたりしちゃって―――そんな、愉快なのか怖いのか分からないシュールな想像へ逃げかけたプーチンを心底震わせる低い声が叩いた。

 「―――さっさと編め」
 「は、はひぃいーーーっ!」


 その仕上がりに合格が貰えるまであと数回、赤い髪は解かれなければならなかった。

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