僭越ながら、下記コメント返信(反転表示)です。
>27日 無名様
お初にお目にかかります。コメントありがとうございました!
面白いといっていただけてとても嬉しいです。キルは出現率高くなると思うので、受け入れていただけて安心しました……
駄文サイトですが本家共に精進致しますので、今後とも宜しくお願いします!
ううう……嬉しくてかなり挙動不審です。すみません。
あと駄文&遅筆ですが、もしリクエストやネタ提供があれば是非教えてください。
分かりやすいくらい調子に乗った結果。
双子×緑。玉突きゲーム。
でも落ちが早速ワンパターンになってきてピンチ。
本文は『続き』からどうぞ。
背の高いスツールに腰掛けたプーチンは、ほけっと口をあけたまま前のテーブルを眺めていた。
広い室内、高い天井に大きなシャンデリア、立派な張りのビリヤード台。壁にはご丁寧にバー・カウンターまで設置され、その後ろにずらりと高級酒が並べられている。この空間が家の一室であるなどと誰が思うだろうか。
お金持ちの家というのはやっぱり違うものなんだな―――根っからの庶民なプーチンは案内された時からただ呆気にとられていた。
視界の先で先攻のキレネンコが、片目を眇めて狙いを定めていた。傍らでは、後攻のキルネンコがキューを磨いている。
赤い瞳が、鋭さを増す。
ショット。
繰り出された突きに、テーブルに残っていたカラーボールが過たずポケットに落ちる。
ゲーム・エンド。
鮮やかな軌跡を描いたキューボールのみ残るテーブルにプーチンが感嘆の息を零す。
格好良いを通り越して、華麗なくらいだ。
しかし、見惚れている緑の瞳の前で、ゲームをしている当人達はひどく無感動な目をして溜息を吐いた。
「「つまらん」」
異口同音にぼやかれた言葉に、プーチンは確かにそうだろうと思った。
二人の実力が伯仲なのは間違いではない。ただ、両者共にレベルが高すぎる。
一度プレイに立つと、どちらもまずミスショットをしないせいで勝負自体が成立しない。激しい時には最初のブレイクショットでテーブルのカラーボールが全て消えてしまう事もある。
先攻に立った方が必ず勝ってしまうゲーム。これで面白いはずがない。
恐らく楽しんでいるのは見ているプーチンと、プールで落ちてくるボールに潰され悦んでいるコマネチだけではないか。
ゲコ、と同意するようにプーチンの膝でレニングラードが鳴いた。
それはやっている当事者達もよく分かっている。
久しぶりに手加減せずにやれる相手なのだが、勝負がつかないのでは意味がない。
昔時折ゲームをしていた頃は、こうならないようお互い一定まで実力をセーブしていた。しかしその暗黙の協定も今回は両者持ち出す事はない。
理由は一つ―――例えゲーム自体がつまらなくなっても、観戦する人物に少しでも相手に劣る瞬間を見せる訳にはいかない。
勝者は、常に自分。
各々の赤い瞳には何時になく高いプライドが滲んでいた。
そんなわけで玉を並べては突いて、一人で全て落として、また並べて突いて今度は相手が全て落としてを繰り返してを暫く。
いい加減不毛な娯楽にキルネンコは飽きていた。自分も実力を加減するつもりはないが、相手はもっとないはずだ。ではどうするか―――キューボールを弄びながら、ぐるりと室内を見渡す。
その目が、ぱち、と緑の瞳と、合った。
同じような結果が繰り返されるのに飽きもせず、ショットが決まる度に瞳を輝かせるただ一人の観戦客。
―――途端、縫合痕残る顔に浮かんだ人の悪そうな笑みに、プーチンはしゃきんっと背を伸ばした。
え、え。何ですか。
だらだら冷や汗をかきながら声にならない問いかけで口を開閉させるプーチン。
それには構わず、キルネンコは「おい」とキューを磨く片割れを呼んだ。
「次の勝負は、アレを賭ける」
びしっとキューで示す先―――その先で、プーチンは「えぇっ!?」と叫ぶ。えぇっ、何で?、と。
その答えは簡単。
実力が等しく勝負がつかないなら、実力以上の力を出す仕掛けを用意すれば良い。その仕掛けを作るのに丁度良い具合に居たからだと、尋ねればきっと眉一つ動かさず返答が返っただろう。
目を白黒させて尋ねるどころではないプーチンを視界の端に捉え、しかし呼ばれたキレネンコは目の前で不敵に哂っている双子の片割れへ首を振った。
「俺が勝った時、俺に対してへのメリットがない」
「アレは、俺のだ」とあっさりと言われ、再びプーチンが「えぇっ!?」と叫んだ。えぇっ、そうだったの?、と。
当然二人にその意味が伝わるわけはなく、話はどんどんと続いていく。
「賭けるんだったらお前も相応の物を出せ」
「面倒くせぇ奴。だったらいつもの―――ニールバレットの限定ので良いだろ」
仕方なく、といった様子で提示された品に、キレネンコの眼に光が増した。
最上級スニーカーブランドメーカー・ニールバレットの限定モデル、ブラック。
かつて一足のみ販売され、どちらが所有するかで三日三晩本気の兄弟喧嘩を繰り広げた一品。
ちなみにその際は屋敷の裏山が綺麗に消えた。
部下に「これ以上壊れると地盤が崩れます」と泣き付かれたので仕方なく、公正明大で一発勝負な籤引きを設けた結果、限定スニーカーは弟の手へと納まった。
以後二人の間で賭け事をする際に登場していた、キルネンコの虎の子。珠玉の一品といっても過言でないそれを得る機会は、奪う相手が居なくなった以上永遠にないのだとついこの前まで思っていた。人生とは数奇なものだ。
ならば、このチャンスを逃すわけにはいかない。
「いいだろう」
「えぇっ!?」
いいんですか?、とプーチンは叫びそうになる。
いいんですか、僕の意思無視で賭けの対象に上げられてしまっても。
いいんですか、多分スニーカーだろうもう一つの景品と同列に扱われてしまっても。いいんですか、それで。
二人が所有権を賭けるくらいだから並大抵の靴ではないのはプーチンでも分かるが、ちょっと複雑な気分になってしまう。
そんなプーチンには構わず、二人の間でルールが着々決まっていく。娯楽として和気藹々と楽しむのは無理な、常人には過酷過ぎるルールが。
モチベーションが目に見えて上がった赤い瞳が、不穏当な光を放ってお互いを見た。
「後で後悔するな」
「そっちも吠え面をかくな」
「「―――ぶっ潰す」」
「ひっ!?ひぃぃぃ……!」
テーブルから漂う殺気に、常人代表のプーチンがスツールの上で怯えた。
娯楽ってこんなに危険な空気になるものだっけ―――そんな疑問に答えてくれる相手は居ない。
リボンもかけられていない景品の上でゲコ、とコングが鳴った。
*補足*
ロシア諺
二頭の熊は同じ巣穴では暮らせない。
Два медведя в одной берлоге не уживутся.
実力のあるものが二者いるとき、争いは避けられない。