『捨てるゴミ 捨てるあなたは 粗大ゴミ』
…
人がゴミのようだ?(by赤い彗星)
双子弟×緑。ショートショート。
昨日のと対ぎみです。
―――こほっ。
立ち上る紫煙に、隣が咳いた。顔へと流れる副流煙をバタバタと扇ぎながら、小さく咳を繰り返す。
控えめに、けれどどうしても耐えられずやってしまった様子を眺めていると、気づいた顔が目を泳がせた。
「す、すみません……ちょっと、煙草が駄目で―――」
縁がなかったんで、と付け足しながら、それでも即「大丈夫です!気にしないで下さい」と笑ってみせる。
―――別に、出来もしない取り繕いをする必要は無いのだが。
右の物を右としか言えない性格をしている相手が左だと言っても、説得力は皆無だ。そしてそれもまた、どうでも良いことだ。
気を使おうと使うまいと、別にこちらがそれで何か思うわけでもない。
取り繕おうが隠し事をしようが、別に構いはしない。
ただそこに存在する意思が、何の外的要因を含んでいるにしろ明確に持たれていれば良い。
指に挟んでいた煙草を咥える。吸った煙の、含まれる成分に思考がクリアになる。
やはりこれは、手放す気にはなれない。
胸深くに煙を流し込み、煙草の灰を叩く。そのまま短くなったそれを灰皿へ―――すでに軽く山を築いているそれは別に苛立ちのグラフではなくただの習慣の結果だ―――押し付ける。
特に考えることも無く、ポケットから箱を取り出す。内からまた一本、新しい煙草を取り出して火をつける。これを手の届かない場所へ置くというのは考えられない行為だ。
すぐ脇で立ち上る薄い煙に、隣から伺うような声が響いた。
「好きなんですか?」
「無いと腹が立つ程度には、な」
確実に禁断症状が出るだろう品を、無くすわけにはいかない。
ある程度の理解と協力を周囲に強要してでも、保持しておかなければ。
「そういうもの、ですか」
脇で分かったような、分からないような声が上がる。
吸わない人間には分かりはしまい。それはこちらがどれだけ言葉をつくしたところで、実感として得られるものではない。思ったところで、伝わりはしない。
咥えたものから吸い込む空気が胸を満たす瞬間も、それが途切れた時に感じる不快な苛立ちも、教え説いたところで僅かにも伝わらない。
案の定さっぱり分からないという顔をしている相手に愉快になり―――手を伸ばす。
警戒も何もしていなかった顎を掴む。開かれた澄んだ丸い瞳はきょとんと呆けていて、それが若干―――呆れてしまう。もう少し怯えたりしたらどうだ、と些か警告を与えたくなる。
「えっ、と……?」
問いかけか呼応か。
薄く持ち上がった唇を、覆う。
内側に満ちていた煙の塊を、味を知らない口内へと吹き込んだ。
―――こういうのは、非常に愉しい。
「!!っぅえっほ、げほっ!けほっ!」
「少しは慣れておけ」
咽ながら顔を青くしている相手に、暫くは嗜好品の充実が図れる。息抜きと気晴らしの新しい一品、ともいえるか。
爽快感と充足感は両者伯仲。
どちらも両方、手に入れる。
―――
反応は多分愛情の差。