(緑)+双子弟。ショートショート。
キル様が本当使いやすいんです。
でもこうなってくると二次創作じゃなくて最早設定流用しているだけになっている気が……(汗)
本文は『続き』からどうぞ。
『―――あっ!あの、僕です!聞こえてますか?
えっと、大した事じゃないんですけど、ちょっと伝えたくって……あのですね、今日ちょっと変わったものを料理してみたんです。見た目、ちょっといまいちなんですけど、でも!味は良いんですよ!自分でも美味しく出来たと思うので、あのー……色々と忙しいと思うんですけど、もし良かったら、食』
ぶつり。
部屋に、切断音と共に静寂が戻る。
電話に繋いだレコーダーの先で途切れた音へ、くっくっと喉を震わす笑いが起こった。
―――本当に、要領が悪い。
意味不明のまま終わった用件へ一頻り笑うと、彼は執務机の席から立った。
コートを手に取り、真っ直ぐにドアへと向かう。一片の揺るぎもないその後姿に、脇から戸惑うような声が上がった。
「…………お出かけですか、ボス?」
古くから居る側近の一人で、右腕とは呼べないまでも―――彼の右腕になるのは鏡写しの肉親だけであったし、彼もまたその右腕であったから―――そこそこ信を置いている相手へ、肩越しの視線が僅かに飛ぶ。
向いたその赤い瞳に含む光に気づいて、書類を手にした相手は、ああこれは駄目だな、とにわかに悟った。
普段は限りのない実力とそこそこの勤勉さで下を纏めてくれる彼らの主人も、この目をした時には何を言っても聞かない。
いや、こちらから意見するような事など、そもそも出来もしない。
気まぐれな猫のように望むままに、在るがままに生きる存在を、止めることなど出来はしない。
それでも一応、本日のこれからの予定を把握している相手は、諦め悪く尋ねた。
「今日のスケジュールは、ご存知で?」
問いかけに振り向いた顔は、明らかにこちらの心情を慮る様子ないまま片頬を上げた。
「指示は出してある。それで動けないような連中を置いている覚えはない」
「……………」
鼻で嗤うように言って退けられ、返す言葉は出ない。額を押さえながら「……はい」と頷いた相手に満足そうに嗤うと、躊躇うことなく足はドアへと進む。
編んだ髪を揺らすそのひどく愉しげな後姿に、これからの予定を組み替えなければならなくなった相手は深く一礼を送った。
―――予定にない出来事の方が、面白いだろう?