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監獄兎中心期間限定サイトの日記という名の掃溜
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 金曜日に学生時代の後輩と久々に同窓会的なものをやって、またしても醜態晒しました。
 だから、前に、あれほど調子に乗るなと、自戒しただろう自分……!

 ……また、酒で失敗しました。

 今度は記憶はあります。が、かわりに携帯につけてた耳無しボス(両耳とも折れて坊主状態)がいつの間にか消えてました。記憶ねぇじゃねぇか。


 閑話休題。


 緑も、飲んでも懲りないタイプですよね。シーズン3の酔い方はめろキュンでした。
 本家においた七夕へ感想をいただいたのが超嬉しくてまた調子に乗った。ここも相変わらずです。


 赤×緑。
 七夕祭りの後。





 本文は『続き』からどうぞ。



 

 おほしさまが、くるくる、まわってる。

 プーチンの昨夜の記憶は、そこで途切れていた。


 再び目を開けた時、場所は外から室内へと移動していた。
 高い天井、家の物とは比べ物にならないふかふかのベッド、そしてそこへ沈み込んだまま指一つ動かせそうもない自分の体。
 状況を認識する頭はズキズキとした鈍痛が走る。ついでに、心持ち胃から口の方へとせり上がってくる、気持ち悪さ。爽やかな目覚めとは程遠い―――久しぶりの、二日酔いだ。

 「う゛ぅ~……きもち、わる……」

 うぷ、と押さえた口元は一応まだ我慢できる範囲なのでそれだけが幸いだ。まさか、人様のベッドを汚す訳にはいかない。ついでに食べたご馳走も高級酒も惜しくって戻したくない。至って庶民なプーチンは、吐いて楽になるよりきちんと消化することを選択した。
 枕に顔を埋めながら、さてここへ運ばれるまで一体何があったろうか、と。彼は思い出せる限りの記憶を掘り起こす。

 昨夜は七夕で、天気は良く晴れていて、ちょっぴり面倒そうな顔をしているキレネンコさんを引っ張ってキルネンコさんのお屋敷まで来て、大きな笹を立ててもらって、メイドさんたちと一緒に短冊を書いて、背の高いキレネンコさんにそれらを吊るしてもらって、沢山の星を見て、皆で笑って。
 それからすごく良い匂いのするお酒をお兄さん達から振舞われて、怒った顔したキレネンコさんが取り上げようとしたグラスをキルネンコさんがそのまま回してくれて、喜んで一口飲んで、それから、それから―――

 うーんと唸って、考えた結果。
 結局それ以上思い出せなかった。頭を使ったせいか酷くなった頭痛に、とりあえずはっきり言えるのは自分はやはり下戸なのだという事。仮に勤めをしていればまた刑務所送りになるところだ。

 「むほー……あんなに美味しいのに、何でこうなるのかなぁ……?」

 飲んだ瞬間は気分が高揚して、とても元気になるのに。次の日は体調不良に陥ってしまうのだから実に不思議だ。
 アルコールは飲み続ける事で強くなると聞くから、これからは毎晩晩酌でもして慣らしていこうか―――明らかに反省する方向が間違っているプーチンの、その思考を断ち切るかのようにがちゃりドアが開いた。

 「あ。キレネンコさ、ん……」

 顔を上げて部屋へと入ってきた人物を確認したプーチンは、声を窄めた。二日酔いの気持ち悪さとは別に、胃がきゅうっと収縮した気がする。
 遠目からでも分かる鮮やかな赤眼は半眼で、浮かべられた表情は険しい。最後の方残った記憶と寸分違わぬ、怒った顔。
 整っているのに―――整っているから余計、か―――威圧のある相手に、流石のプーチンも暢気に「おはようございます」と目覚めの挨拶はかませない。やったら最後、永久に目が覚めなくなる。
 もう少し、目が覚めるタイミングが遅ければ良かった―――かといって今更、狸寝入りも出来ない。肌触り良いシーツに包まれながら冷や汗を伝わせるプーチンに、無言でキレネンコが近づいた。ずんずんと歩くその足音が、大変穏やかでない彼の心境を物語っている。
 ぴたり枕元まで来て止まった足に、慌てて身を起こそうとするプーチンを、けれど伸びた手が押し戻した。
 突き飛ばすでも押さえこむでもなく、そっと。衝撃を受けると拙い体を労わるかのように、柔らかくベッドへと沈める。
 枕の上乗った、若干青い顔色を一瞥したキレネンコは押した手と反対の手に持っていたボトルを見せた。タプリ満ちた透明な液体。自分へと差し出されるそれに緑の瞳が瞬き、

 「僕、お酒はもう飲めそうにないんですけど―――ぁたっ!」

 ゴツッ。

 と、前髪を括って無防備になっている額へ瓶底が落ちる。落下速度を加減してくれたものの、痛いものは痛い。またしてもくるくる回る星を見たプーチンに、冷ややかな声が降った―――「水だ」と。
 どうやら迎え酒ではなかったらしい。最も、これ以上飲めば急性アルコール中毒を引き起こしかねない。一応その程度には自覚あるプーチンは、大人しく礼を言って水を受け取った。
 丁寧に蓋まで外してくれているボトルから、こくり一口飲む。アルコール焼けして乾いた喉を潤す水は冷たく、とても心地よい。ぼんやりした意識と気持ち悪さが、少し回復した気すらする。
 零さないようゆっくりと水を飲み下している顔の上に、小さな嘆息が降った。
 反射的に見上げた先、未だに険しい顔したキレネンコと目が合う。赤い瞳も相変わらず、機嫌悪く半分閉じている。が、そこに更に些かの呆れが混ざっているのが付き合いの長いプーチンには分かった。
 突き刺さるその視線に、何と言って返したら良いのだろう―――沈黙を誤魔化すよう水を口にするプーチンへ。重い口を先に開いたのは、無口な相手の方だった。

 「……酒は飲むなと言ったはずだ」
 「うっ……で、でも、勧められたのを断るのは、悪いかなぁって……」
 「あんなのは放っておけ」

 あんなの―――同じ顔した肉親をはっきりそう唾棄したキレネンコの眉間に皺が更に寄る。心底憎憎しげに歪む表情へ、色々言いたい事はあったものの、とりあえず。

 「……ごめんなさい」

 大変素直に頭を下げると、振り撒かれていた威圧が少しだけ緩んだ。同時に、気張っていたプーチンの体もホッと緩む。落ちる雷―――実際は落雷よりももっと激しい拳骨が降るのではないかと思い、自然緊張してしまった。
 安堵した事によって再び落ち着きを取り戻したプーチンは、ふと首を捻った。

 ―――そういえば結局、七夕はあの後どうなったのだろう。

 準備、実行、片付けと計画していた内容のうち、覚えているのは心底楽しんだ準備と実行まで。そこから一旦記憶が飛び、現在主催者の自分はベッドで休んでいる。
 では最後に残った、楽しさが全て消えてある意味一番煩わしく感じる事後処理は。本来プーチンが行うはずだった締めの仕事は、どうなったのか。

 今頃漸く思い至った責任問題に、彼は唯一ここで状況を教えてくれる枕元のキレネンコへ答えを求めた。

 「あのー……後片付けって、どうなりましたか……?」

 恐る恐るの問いかけに。無視されたかと思うほどの長い間の後、返事があった。曰く、

 「…………済んだ」

 ただ一言。叱責も苦言も含んでいない、無表情で告げられる報告に、プーチンは思わず跳ね起きてベッドの上で平身低頭頭を垂れようとし―――二日酔いでまともに動けない体を縮めて「すみません……」と消え入りそうな声を発するのが精一杯だった。
 きちんと謝りたかったが、大声を出すと頭に響く。残ったアルコールのせいばかりではなく、目の前がクラクラした。それは相手も怒って当然だろう、と。
 最も、キレネンコの行った後片付けがそんなに手がかかったかといえばそうでもない。

 立てていた巨大な笹を引き抜き、素手でバキバキに折ってから紙くずと化した短冊一式と共に着火。まとめて焼却処分。

 ちなみに、筒状の幹内に空気を含んだ笹は火にくべると派手に弾ける。パンパンッ!と爆竹さながらに響く炸裂音と、火の粉撒き散らす業火に慌てる面子を見て少しだけ溜飲を下げた。
 一人だけ、炙る炎も全く気にせずグラスを傾けていた奴はいたが―――「生木は燃えが悪い」とつまらなそうに炎と同色の目を向けた相手に、だったら屋敷に放火してやろうか、と思ったが一室に酔い潰れたプーチンを寝させていたため諦めた。
 火をつけるのはプーチンを家へ置いてきて、且つここの部屋へ住んでいる当人がいるのを見計らってからにしよう。そう、心に決めて。

 ―――しかし何はともあれ、日付も代わって一応七夕という名の馬鹿騒ぎも終わった。天空の星が引くのと合わせて人の波も去り、今は辺り一体が静寂に包まれている。祭りの後の静けさとでもいうのだろうか。騒々しいのが嫌いなキレネンコにとっては白けた空気であるこちらの方が性に合う。
 漸くつける一息を文字通り口から吐く。静かな部屋に響いたその音に、ピクリベッドの上の体が強張った。

 「……ごめんな、さい」 

 先程の謝罪よりももっと小さな、掠れた声。ゆるりキレネンコが無表情の顔を向けた先、揺れる緑の瞳があった。
 目を合わせたプーチンは、大きなベッドの上小さな体をさらに小さく丸める。顔までシーツを引き上げると、見下ろす双眸から隠れるよう中へ潜り込んだ。

 ……本当はそもそも、キレネンコがこの企画自体乗り気でないのは知っていた。女性と子供くらいしか喜ばない七夕に興味がないのも、大勢で騒ぐのが好きでないのも、知っていた。

 それでも、年に一度の星合いの日を共に祝いたくて。沢山の人が幸せを感じている中で、一緒に―――天空で巡り合う二つの星座のように、出会えた喜びを噛み締めながら、並んで輝く星を見上げたかった。

 その結果が、これだ。振り回して怒らせて心配をかけて、挙句仕事を押し付けた。
 心底申し訳ないと思うと同時に、愛想をつかされて見捨てられるのではないかと―――恐くなる。そうなっても仕方ないと分かっているが、いつも傍らで見下ろす赤い瞳が消えることが、川を隔てるまでもなく触れる温もりが遠く手の届かない場所に去ってしまうことが。
 どうしようもなく、恐い。
 本気でキレネンコに嫌われたらきっと、どれだけ短冊に願い事を書いて空へ掲げたとしても幸せはやってこない。

 どれだけ皆と楽しく笑いあっても、隣に大切な彼がいなければ。星は、催涙雨で霞んでしまう。

 こんなことなら無理に賑やかな七夕を企てたりしなければ良かったと―――そう考えてしまうこと自体、無責任なのかもしれないけれど―――昨夜までの浮ついた気持ちも消えて、後悔ばかり募る。
 一瞬良くなったと思った吐き気がぶり返す。ガンガンする頭痛が辛く、目元がじんわり熱を持つ。それすら、身から出た錆。本当に、どうしようもない―――
 
 重い心を抱き石に真っ暗な深い川底へ沈むような、暗鬱な思考。溺れて浮上することができなくなったプーチンの、覆うシーツがぺらり剥がれた。
 突如布の向こうから覗いた赤い瞳に、慌てて顔を隠そうと手を動かす。が、持ち上げた腕はあっさりと広い手に捕らえられ脇に押さえられた。掴む手に力はまるで入れられていないものの、それを振りほどくだけの元気は今のプーチンにない。
 眼光鋭い目に浮かんでいるだろう軽蔑の色を想像し、堪らずギュッと瞼を瞑る。部屋へ彼が入ってきた、怒っている顔を見た時以上の恐れで体が震えた。
 込み上げる吐き気と、嗚咽が漏れないよう息を噛み殺し。完璧止めを刺すだろう宣告を、身を硬くして待つプーチンへ―――降ってきたのは羽根のように軽い掌の感触と、本日何度目かになる言葉のない小さな呼気だった。
 頬へと当たったそれらにそろり目を開くと、間近に赤色があった。思っていた以上に近い距離で見てしまった目に心臓が跳ねる。近すぎてその目にあるのが予期していた軽蔑なのか呆れなのか、それとももっと別のものなのか分からない。
 ピシリ固まったプーチンは、それでも小さく開いたキレネンコの唇を見て全神経を耳へと向けた。

 「…………来年は、」

 来年は―――こんな七夕なんか、付き合わない?それとも、来年は、もう一緒に居ない?

 途切れた言葉に浮かぶ、続き。どちらも聞きたくない。
 頬へ触れる手が無くなるのも、すぐそばにある赤い瞳が見えなくなるのも嫌だ。
 来年は―――来年は、そう。もう、無理を言ったりしないから。迷惑をかけたりせず、静かに家に閉じこもって一夜が過ぎるのを待つから。


 だから、一番大事な願いだけは。叶えたままで―――


 「ら、来年は―――!」
 「……来年は、もう飲むな」
 「…………え?」

 パチリ。驚きに瞬いた目から一粒、雫が落ちる。零れたそれにも気付かず呆然としているプーチンに、代わりに頬へあった指が拭った。
 言われた意味が分からない―――濡れたまままじまじと凝視する緑の瞳に、今度はキレネンコが目を逸らす番だった。

 眉間に皺寄せた彼自身、自分で言った言葉の意味が分からない。額面通りとればそれは来年も、今回と同じような馬鹿騒ぎを許可するものなのだから。

 五月蝿いのは、嫌いだ。人と顔を合わすのも煩わしいし、図に乗る女どもは殴れない分余計腹が立つ。何よりこの場所自体が魔窟だ。主人を筆頭に召使までロクでもない奴ばかり揃っている。
 それでも何故か、騒ぐのが好きなプーチンはそんな煩い連中とどうも気が合うようで。認めたくはないものの、微笑みかけられても笑い顔一つ、相槌一つ返せない自分より話が弾んでいるのも、事実である。
 昨夜決めた『二人だけで祝う』というのは自分にとっては十分でも、はしゃぐ同居人が物足りなく感じるのでは意味はない―――第一、キレネンコは七夕自体がどうでも良いと思っているのだから。

 だから、夜空瞬く星のように瞳輝かせる相手が望むように。

 付き合えというなら重い腰も上げるし、短冊を吊るせというなら下らないと思っても結んでやる。そして傍に居る事を望むのなら、夜が明けて星が消えた後でも。隣に、居る。
 川が隔てて会えないと嘆く星は情けないものだ―――そんなもの、流れを割って渡ってしまえば良い。仮に今触れている手の間、阻む濁流が出現したら何ら躊躇い無くこの両足は突き進む。1年も待つなど馬鹿馬鹿しい。
 願いはいつだって、自分で叶える。自分の願いも、相手の願いも。

 ……そのために多大な忍耐を要しているのだから、溜息くらいは吐くが。

 目を丸くしたまま固まっているプーチンに、もう一つ諦念の息を落として。キレネンコは、口を開く。
 沈みかけた星を掬い上げ、再び光もたらす一言を。

 

 来年も再来年も。お前の、気の済むままに。

 

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