まぁ需要があるほどのサイトではないのですが、それでも来て下さる方の好みとか傾向とかある程度は見えてくるものです。が、それをあえてスルーする自分本当天誅って感じですね。申し訳ありません。
勢いと出来心だけで生きているナマモノ故、どうぞ平に、平にお許しを……(土下座)
某方の日記にあった魂の重さの話を見て、あ、使いたいと思った次第であります。直観SSS。
双子(+緑) というか弟。
その重みを量ってみると良い。
本文は『続き』からどうぞ。
※死にネタ注意。
人の魂の重さは21.262グラムだと聞く。
なら、キレが下げているあの筒もそれと同じ質量があるのだろう。
4分の3オンスの重み
キレがファミリーへ戻ってきた。予告も何もなかったせいで部下の大多数が驚いた。
相変わらず傍若無人で人の話を聞かず、自分勝手で空気をまるで読まない。愛想もすこぶる悪い。それでも実力は昔と衰えず顕在なので使えなくはない。
一つのファミリーへ首領が二人、という不可思議な状態にすぐ誰もが順応した。
キレが戻ってから1ヶ月が経とうとしている。それはつまり、アイツが居なくなって1ヶ月経つという意味だ。
乗車と降車の絶えない人生の環状線の中で生まれて初めて永遠の繋がりなんてものを望んでみたアイツはあっさりその環から抜けてしまった。
苦しみは少なかったのだと思う。伏したベッドの上でも笑うアイツに対し、俺とキレは対照的に沈んだ表情を向けた。
一度、キレと揃ってアイツに呼び出されたことがある。
起こすことさえ難しくなった頭を枕に乗せたまま、お願いがあるんだけど、と笑みを見せた。
『二人ケンカしないで、仲良く。ね』
(お前はいつ俺たちの母親になった。)
目線でそう言うと、それこそ子供を見る親のような目をしてみせた。
キレの首には小さな筒がぶら下がっている。ロケットペンダントを少し拡大したようなもの。今際の際、アイツの口へ翳したものだ。
俺はそれが欲しい、と思わないでもないのだけれど、無理に奪い取ることはしない。出来ない、というのが正しい。
キレが持つ筒に俺は時々触れてみる。キレは嫌そうに顔を顰めるが、拒否はしない。大人しく首を傾けて筒に触れやすくする。
冷たく硬質な感触はアイツと似ても似つかない。指先にかかる重さだってあってないような、その程度のもの。中身の重量だけ取り出すならさらに目減りする。
アイツの最期を看取ったのはキレだった。
だからキレがそれを持つのは仕方ない。そして俺たちはそのことに関して争えない。居なくなったアイツのそれが頼みだから。
束縛というには拘束力のない、絶対に解けない約束事。
俺がその筒を手に入れられなかった代わり、アイツはきっと俺がキレに抱く不満その他を持って行ったのだろう。筒の重さから考えるととても等価交換になっていないが、アイツはそんなのにこだわらない性質だ。
キレがアイツを持っていて、アイツが俺を持っていって、俺がキレを持っている。
なら、この環はまだ繋がっているのだから良しとすべきだろう。
キレは仕事がない時は大抵裏庭にいる。仕事がある時でも俺に押し付けてそこに行く。俺は部下に仕事を押し付けて裏庭に降りる。
庭の中で一番古くからある大木、その下にアイツを埋めた。墓標の十字はなく、年中葉を茂らせる枯れないそこの木が目印だ。
キレはその幹へ寄りかかって目を閉じている。俺はその横へ少し間を空けて腰を下ろす。
ひと一人分座れる隙間へ実際誰かが収まるわけではないが、これが俺たちの中での最適な距離だった。
目を閉じて、耳を澄ます。梢が立てるサワサワという音の他、何も聞こえない世界へ俺とキレは籠る。
笑い声の響かないその空間は少しつまらなくはあれど、気のせいかアイツの近くに寄った気分になる。筒の蓋を開いたわけでもないのにそう思うのは、やはりそれなりの理由があるからだ。
俺もキレも、それで十分だった。
機会があればキレの首にぶら下がる筒の重さを量ってみると良い。
もっとも、その質量が21グラム以下でも以上でも俺は構わないのだけれど。
アイツが居たという事実は俺たち二人がちゃんと覚えているのだから。
+ + +
魂の重さを量る実験が実際には失敗したものであれば、魂が気体だということすら空想なのかもしれません。
でも、その命があったという過去は記録として、記憶として、確かに残っているんですよね。
閉じ込めたのがただの空気であっても、覚えている限りはずっと一緒、と思いたい。