これくらいが正しい小話の長さだと思うのですが、1つの話でそれをしようと思うと俺には纏めきれません…orz
緑+看
まったく、敵わない。
でも、幸せだよ。
本文は『続き』からどうぞ。
集めた皿の残骸を丁寧に新聞紙に包み、不燃物の袋へ収める。
こうしておけば後日家人がゴミ出しする際、破片で手を傷つける心配がない。ちょっとした怪我でもすぐ涙目になる深緑の瞳を思うと厳重にしておいた方が良いだろう。
最後にギュッと袋の口を結び、カンシュコフはよし、と頷く。
今度の手土産は、新しい飾り皿とか良いかもな―――などと考えていた彼を、後ろから呼ぶ声がした。
振り返ると3種類のケーキを乗せたお盆手に、プーチンがニコニコ微笑んでいた。
「カンシュコフさん、お疲れ様です。ケーキどれにします?」
「は?だから、俺は後で良いって」
友達なんだから、客扱いするなよ。そう何度目かの台詞を繰り返す。
すると柔らかな光湛えた緑色は、
「片付け手伝ってくれたから、そのお礼に」
ありがとう、と感謝を込めてカンシュコフを見上げる。
そこまで言われては断れまい。ならお言葉に甘えて、とカンシュコフは盆を覗き、見当をつけた後ガトーショコラを選んだ。
別にチーズスフレでも構わなかったのだが、台座のしっかりしたこちらの方が後でプーチンに味見させてやる時取りやすかろうと思ったからだ。
雛を餌付けしているような遣り取りは、カンシュコフにとってケーキの中身より重要である。
「じゃあ僕はコレ!」
残り2皿のうち、プーチンは迷わず片側を示す。
先程より更に輝く瞳が映すのは、真っ赤な苺の乗ったショートケーキ。
―――予想通り。
多分プーチンならこれを取るだろうとあらかじめ選択肢から抜いておいたのだが、見事正解した。鮮やかな果実と甘いクリームを前に今にも踊り出しそうなプーチンへ、カンシュコフも自然顔が綻ぶ。
「―――そういえば、アイツには選ばせなくて良かったのか?」
アイツ、というのは勿論此処のもう一人の住人、先にキッチンを出て行ったキレネンコの事である。
何も手伝わず一人遊んでいたのだから選ぶ権利なんかないと言えばそうなのだが、相手はあの傍若無人。好きな物を先に取られ食べられなかったりしたら、それこそ皿という皿全て叩き割ってまわりそうだ。
そんなことになれば折角残っているプーチンのコレクションも被害を免れないかもしれない。
実に噴飯甚だしいが、ここは大人しく餌をくれてやった方が良いのではないのか―――苦い顔をするカンシュコフに、プーチンは「大丈夫!」と判を押す。
「全部キレネンコさんが好きなのですから!」
(……敵わないよなぁ、)
自信一杯、外れてどやされる心配などまるでない笑みは、彼の目から見てもとても、幸福そうで。
相手を良く知る彼にか、知らしめている相手にか―――カンシュコフは思わず、苦笑する。
(悔しいと思わない敗北があるなんて、思いもしなかったよ。)
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