運狙続きでサイトの趣旨からはずれてしまうのですが、一晩その話漬けだったので余韻が消えないうちに。
今はほとんど生きていない我が家のコプの初期設定は、そういえばこんなでした。
運→←狙
認めちゃえば良いのに。
本文は『続き』からどうぞ。
「ボリス、好きだよ」
爽やかとしかとれない笑み浮かべて告げるコプチェフのこの言葉が、ボリスは嫌いだ。
「…………」
むっつり睨み上げる黒眸に、コプチェフは微笑を苦笑の形に変えた。
「好きって言ってるのに何で睨むかなぁー?」
「お前の言葉は、信憑性がねぇんだよ」
「えぇー?」
互いを信頼しあうのが相棒であり、互いの言葉を疑わないのがコンビであるのだが、全否定されてしまった。
心外だ、と言わんばかりに丸くなった目へ、何が「えぇー?」だとボリスは毒づく―――同じ顔して同じ声で、全く同じ内容をその辺どこかしこの女へ云うくせに。一体どれだけおめでたければ、そんな戯言を信じるというのか。
運転の腕は高く買っているし、それ以外もオールマイティーに優秀な方だと思う。民警としては少しルーズな面もあるが頭のガチガチに固いクソ真面目な仕事馬鹿よりはマシ、何より狭い車内で同じ空気を吸っても不快感がない。殆ど腐れ縁な相手はむしろ空気そのものに近い。
冷静に下されるあちらの判断は確かに正論が多いので聞いている―――自分の頭に血が上っていなければ、だが―――が、どうでも良いことになると途端、ホラを吹き出す。
八方美人、太鼓持ち、女タラシ。見た目の良さに惑わされて、皆耳と頭が馬鹿になっているとしか思えない。
だから、ボリスは絶対に騙されない。耳をかさないし、一度たりとも本気に捉えたりしない。
苛立ちに噛み締めた歯の隙間から、強く、否定の言葉を放つ。
「……俺は、嫌いだ」
『好きだよ』
なんて、笑顔で嘯くコプチェフが。大嫌いだ。
元からキツイ目元が一層鋭さを増す。得物を手にしている時と類似した眼圧にゾクリ気分が昂ぶる、そんな自分にコプチェフは苦笑した。
本日の告白も、また空振りに終わった。
ボリスが思うようにふざけて言っているわけではないのだが、なかなかどうしてこの信頼すべき相棒はコプチェフの言葉を信じてくれない。何度繰り返しても、全く聞く耳を持ってくれないのだ。
まぁ、原因の大方は自分にあるのだろうけど―――相手に困らない女性遍歴は、堅物のボリスへ警戒心を抱かせるには十分なのだろう。
放つ弾丸と同じ、真っ直ぐな生き方。穢れなんて知らない、友愛も情愛も挨拶代わりに囁く事の出来ないまるで綺麗な彼が、疑心暗鬼に小さく呟く。
「嫌いだ、」と。
本人は吐き捨てるように言ったつもりなのかもしれない。けれど、それはどう聞いても何かを堪えた声で。
食いしばった口元だとか、睨んでいたのにいつの間にか逸らした目だとか。精一杯虚勢を張る、そんなボリスがコプチェフは心底愛おしい。
握りこんだ手の、微かに震えるその腕を引き寄せたら、一体どうなるだろう。藍色の目に映る全てが、嫌いと言う彼自身の言葉を否定している。
身体の上では答えが出てる。
頭の中でもいつも、解が攻め立ててる。
だから、さ。
「ボリス―――好きだよ」
「っ……、」
早く認めてしまえば良いのに。
そうしたらもっと、君を愛してあげられるのに。
ねぇ―――?
消毒行き届いたこの場所を、はやく汚させて。